晴れた、春らしい暖かな午後、京都・宇治にある 品川恭子先生を訪ねました。工房は、日本のよき風景が残る、静かな山里の坂を上りきったところに佇んでいました。お忙しいのにもかかわらず、にこやかにきもの姿でお出迎えいただき、さっそくお話を伺いました。 芸大では、図案化(現、工芸科)でデザインの勉強を され、その頃は、きものにはあまり興味がなかったとか。 4年生に進級する直前、のちに人間国宝となる友禅作家森口華弘氏を紹介され、工房で出会った梅のきものから感銘をうけ、「これこそが私の天職。」と決断されたのです。森口氏に弟子入りの相談をすると、「あなたにはあなたの色がある。私の色に染まることはない。わからないことがあれば、何でも聞きなさい。」とアドバイスされました。 その後、日本橋の呉服店にて、白生地の図案をデザインする仕事につきます。 「楽しく楽しくて、無我夢中で仕事に打ち込んだ。」 向島の芸者の「唐獅子牡丹」のおひきずりをデザインし、とても喜ばれたこともあったとのこと。 朝から晩まで働きづめで、身体をこわされ、やむをえず退社。そこからは、おひとりで、すべて試行錯誤しながら、独学で染色技術を習得されました。実物大の図案を見せていただきましたが、フリーハンドで描くと聞いて、目を疑いました。それほどに線が、精緻で美しいのです。 品川友禅の特徴のひとつに、独創的な素晴らしい色使いがあります。先生は、色の配合をする専用の部屋をお持ちで、三原色で、すべての色を作れると伺いました。京都では、地色は外の職人に染めてもらうことが多いのですが、地色もご自分の工房で引き染めなさいます。色に対する深い想いが伝わってまいりました。 そして、先生は、着たときの姿をイメージして、美しく見えるようデザインされます。 「着る人こそが主役」と。 「着る人に想いを巡らせ、デザインし、自ら染め上げる。」 手のかかる事、ひとつひとつに心をくばり、大切に染め上げられた品川恭子先生の友禅。 これほどまでに、きものを愛し、きものを創作するという仕事に情熱を注いでいる人は現れないでしょう。 誰にも真似できない、美しい透明感のある色使いと、洗練されたモダンなデザインは、まとう人を引き立て、心豊かに包み込みます。 情熱を傾けて染められた、きものと帯-当店のために特に染めていただいた作品も発表させていただきます。きものと着る人の素敵な出会いを想いつつ・・・ 品川友禅の美をぜひご覧くださいませ。 「樋口可南子のきものまわり」 「樋口可南子のものものがたり」にも掲載されています。 <京友禅 品川恭子の美> 4月10日(木)-19日(土) AM.11-PM.7 13日(日)定休日 きもの おがわ屋 店舗にて
by kimono_ogawaya
| 2008-03-18 17:30
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